■教育■

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連れられて来た当日。 視星殿の中に入るなり賢者は片付けなくてはならない仕事に追われ、普段は尊大な老人が子供のように渋々とするのを笑われながら、イリューンと別れ従者に伴われ執務室へと行ってしまった。 教育係であるインブレイスも、やはり他の者達と同じく『希望の種』の登場が今日とは予測していなかったので、既に夕刻ということもありスケジュールの調整をする為に、若い男性の職員に彼を預けて姿を消した。 「明日からの勉強は君の部屋、食事はこの食堂。今日は移動で疲れただろうから部屋で休むっていうのもあるだろうけど」 まだ夕食には少し早い時間のせいか食堂の人気は疎らで、それでも時折好奇の視線を受けながらイリューン達は食事を採っていた。 施設でも同じだったが、食事はメニューこそわりあい自由に選べるものの、必要カロリー分だけを摂取するように決められており、それは呼吸と同じくらい浸透している。 しかし突然増えた『子供』へは対応できなかったらしく、イリューンは食べきれないおかずに苦戦しながら、向かい側に座る男性職員の話を聞いていた。 緊張しながらも真面目にオカズに取り組む少年の愛らしい表情を、食後の飲み物をとりながら眺めていた若者は、ふといいことを思いつく。 「……世界最大で最高の天体望遠鏡、見たくない?」 予知はなくてもわかっていた、零れそうに開かれた眼と突然の期待に食事を忘れた表情を見て、若者は笑って言った。 「よ―し、それは残していいよ。君には多過ぎるもんな。さあ、行こう」 .
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