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どこか神秘的な雰囲気が漂う白く巨大な門をくぐり、蒼い星雲を散りばめたような長い通路を渡り。
視星殿中央にまさに象徴として大きく座す巨大な天体望遠鏡を見た少年は、その壮大さに圧倒された。
「口、空きっぱなし」
職員は笑って、縮こまる子供の背中を押し望遠鏡の側へ連れて行った。最初は自分もそうだったと、入ったばかりの頃を思い出して。
自分は予知でそれを見た時から興奮していたが、やはり生で見た時の感動は圧倒的だった。
まさにその最初の感動と現実の両方が一度に来ているだろう感覚とは、普段星に興味がないとしてもどれほどのものだろうと、傍らの少年を見下ろす。
「何が見たい?」
子供にはおおよそ難しいだろう様々な装置や機能の説明を、つい自分も興奮して専門用語を交え、指をさしながら説明してしまうが……少年は目を輝かせたまま真剣に聞いて、それどころか目についた物を次々に示して声変わり前の愛らしい声で尋ねてきたので、若い職員はすっかり楽しくなってしまい……
つい見たいものを訊いてから、しまったと直ぐに苦い顔になった。
「月!2つの月と……後、無人宇宙衛星が見たいです!」
イリューンはそんな職員の様子に気づくことなく、弾む声で応え、大きな声がホールに響くのを聞いて慌てて口を両手で押さえた。
いくらまだ食事休憩時間であってもここが完全に無人になるわけではなく、ちらほらと見える職員達の視線が集まる。
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