■教育■

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「ただ一人を除いて」 「え」 「『未来を見る能力を持たない者が未来に進む』それが我々フェイトの種だと」 『種』。とても重要な話だとわかるのに、意味がわからない。 問いたいのに、自分を見る冷たい目の奥に怒りとも悲しみともつかない暗い色をを見て、空気があまりにも重くて、唇を言葉の形にしたものの音にできない。 しかし彼女には伝わったらしい。 「この星の民の情報のすべてを蓄えて、新たなる未来で芽吹かせる。それがあなたの使命なのです、イリューン。時間はありません。早速始めますよ」 テーブルの上にある分厚いファイルの表紙がめくられた。 彼女の口から出た『予言』は少年の理解できる能力を遥かに超えていた。 巨大過ぎる思考よりも、目の前にある『やらなくてはならない現実』の方がまだ認識できた。 いつか来るらしい、自分一人しかいない世界など、全く想像できなかった。 漠然とした恐怖感が、無意識に考えることを拒絶したのかもしれない。 こうして、わけもわからないままに教育を詰め込まれる日々は始まった。
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