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初めにここに来た時と同じ乗り物の先に白い馬が4頭繋がれていて、それを見るとイリューンの表情に完全に生気が戻った。
「近場ではあるが、整備されていない場所を走るからね。空気圧で進む機能もあるが……私は馬が好きなのだ」
車の運転手が、車両の前にある馭者用の席に座る前に、少しだけイリューンに馬を触らせてくれた。
「僕、馬に触るの初めてなんです!」
育った施設では愛玩用の小さな生き物しかおらず、映像でしか見たことはなかった。
白かった頬を興奮で赤くさせながらイリューンが言うと、賢者ワイズは笑いながら現実の動植物に触れる勉強も重要だから、カリキュラムに盛り込むように言っておこうと約束してくれた。
しばらく走ったところで馬車は緩やかに止まった。
もう着いたのだろうかと、早すぎることを不思議に思いながらも窓から外を見るが、草原などというものは見えない。まだ整備されている道路の上で、両脇には等間隔に街路樹が並んでいる。
前方をよく見ると、馬の前に1人の男の子が行く手を塞ぐように突っ立っている。
まだイリューンよりも1つ2つ年下のように見える。
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