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馬車が着いた先は、腰ぐらいまで丈の草花が一面に生えた、広々とした場所だった。
馬は車から放たれて少し離れた場所で嬉しそうに自由に草を食み始めた。
しかし、あんなに楽しみにして来たというのに、イリューンの気持ちは晴れず、風が渡る小高い岩の上に腰掛け、膝を抱えて緑の波を見ていた。
(予知ってどんな感じなのかな。先のことがわかるかわからないか、そのせいで他の人達が僕とは違う生き物みたいだ)
(そして……他の人から見たら、僕の方がそう見えるんだ)
イリューンは振り返って、薄い金髪の子供を見た。
馬車が通過する時に後部の泥避け部分に隠れて飛び乗ったのを見ていたのだ。
驚いたり怒ったり強い行動を示すことは、能力の高い者ならお互いわかるのに、なぜかイリューンの場合読めないのだと、若い所員が明かしてくれたことがある。
(あの子はどうなのだろう)
怒ったりしないのに、怯えている。もしかしたら自分のように予知がない子なのかもしれないと、イリューンは淡い期待を持って手招きした。
「さっきの子でしょ?インブレイスは本当に君のお母さんなの?」
「お母さんを知っているの?!」
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