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「お母さんのバカ!!大っ嫌いだ!!」
ルインは泣き叫び、すがるように掴んでいた腕を、自ら激しく振り払い、門に向かって走り出した。
御者に目配せをして子供のことを頼んだワイズが、追いかけようとしたイリューンの肩を掴んで離そうとしなかった。
「ひどいよインブレイス!ルインは会いたくて頑張って……っ早く追いかけて!!」
おとなしい印象の強かったイリューンの激しさに、その場にいた誰もが動揺した。
あの時、草原で話をしたのだ。イリューンには冷たい彼女を、ルインがどれだけ、どんな風に大好きか。
予知能力はまだ弱いルインだったが、会える期待を強く感じて、何も考えずに昨日の消灯から施設を抜け出し、ずっと長い距離を乗り換えたり歩いたりしてきたこと。
そして……母親が喜ばないだろうことも感じていると。
それでも、会いたかった。一目見たかった。
だからイリューンは手助けしたのだ。それなのに 。
逃げるように彼女は無言のまま建物の中へと行ってしまった。
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