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大賢者は、激しく憤った後、黙りこんでしまったイリューンを疲れたのだろうと判断し、今日は休むようにと伝えて部屋へ戻した。
これは異例の処置だった。
精神的に不安定であると判断された場合、速やかに精神安定剤が投与され、カウンセリングを受けさせられる。
大人も子供もない。動揺、不安、混乱の感情は拡散するからだ。
ある悲惨な事件をきっかけに作られた、これは治安を守る為の絶対的な法律になっていた。
しかし、ワイズはイリューンから処置を遠ざけた。
滅亡を知り、安寧に過ごして待つ人々とは違う。
滅亡を越えてイリューンは生きなくてはならないのだ。
廊下を歩いていくイリューンの小さな背中を、大賢者はずっと見つめていた。
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