■予知■

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「幼いとはいえ、我々同様ある程度の予知能力は皆持ち合わせております。情報としてよりも実感として感じ取っているようで……」 通路から、元気に下の中央庭園で遊ぶ子供達を見下ろす男の声が僅かに曇る。 「時々情緒不安定等の精神障害をおこす子もおります。しかし、治療やカウンセリングを繰り返しているうちに完治します」 『治療』の範囲には、幼い脳では処理しきれない恐怖からくる興奮を、強制的に鎮静する薬物投与も含まれていたからだ。 その時、事故は起きた。 一人の少年が、何人かの男の子達に追いかけられて中庭を突っ切ろうとし、転がってきたボールにつまづいて酷く転んだ。 追って来た男の子達は大笑い。自分達の予知が当たったからだ。 いくら未来の映像として見ていたとしても、頭で描いたとうりに他人が失敗するのはゲーム感覚で面白いらしい。 [あの子、いつになったら予知ができるのかしら] [あんなに酷く転ぶだなんて、どうかしてるわ] 本来なら慌てて怪我をしたか心配して駆け寄るべき大人の施設従業員達も、少年が無事に立ち上がることを『知って』いるため、周囲で冷笑しながら囁きあっている。 少年の扱いは明らかに異端児に対するものだった。 大賢者ワイズだけが、熱い視線を向けていた。
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