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それは希望なのか、破滅なのか。
イリューンの肩に手をかけようとしたその瞬間。
「大賢者様」
呼ばれ、振り向くと、ついて来ていた従者達の表情に不安と戸惑いが広がっているのが見えた。
ワイズは目を瞑った。
(イリューンよ。死の恐怖の中から産まれし、強靭で迷いなき生きる力よ。
お前程の強さが皆にあったなら……滅びに立ち向かっていけたやもしれぬ)
これまでの穏やかな繁栄や暮らしの安全を約束して来た“未来を視る力”を、疎ましいと感じて、ひっそりと息をつく。
「予知など……ない方が……」
小さな呟きは、周囲に聞こえることなく長い髭の中に消えた。
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