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「あの子は……!」
中庭を覗く為に白い手摺に両手をかける。
そのあまりにも強い賢者の反応は、案内人である代表管理人の予見の中にはなかったので、彼は慌てた。
『予知』
それはこの星に住む人間なら誰でも持っている能力。
もちろん、能力の大小、正確性、具体性、視える範囲には個人差がある。
基本的に本人の関心が強いこと、生命に関する危険事項には強く発揮される。
逆に関心が無い事柄、無関係な範囲には反応しない。
大人になるにつれ訓練を積み、精度を増したり逆に視たくないものから意識を外したりと、日常生活を円滑にしていく。
それは、運動の様に人々が安寧に生きていく為の能力の一つだった。
たかが子供が一人ボールを避けられずに転んだだけのことだ。それなのによもや責任を問われたりしないだろうかと、男は苦笑いを浮かべた。
「いや……どういうわけかあの子供、イリューンというのですが、彼には予知能力が“まったく、ない”らしいのです」
言い訳がましい説明を口にした。
―途端
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