10人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
今日施設に行ったのは無論以前から視察の予定が入っていたせいではあるが……別にワイズが直々に行くべき仕事ではなく代理の所員でも済む話だった。
ただ、予知とも言えぬ漠然とした勘のような、衝動のようなものが湧き、その感覚を重要視して出向いた。
少年を知った時、子供の頃の無くし忘れていた大切な宝物を、必死に記憶をたどって探し漸く見つけた時のような感動があった。
予め知っていて見つけるのとは、その喜びは格段に違った。
少年の存在を明確に予知できなかったのは、彼が特別な存在であることと関係するに違いない、とワイズは考えていた。
『未来が視えない子供』の不安や言動。
それも己れには理解できないものだったが推し計ろうと様子を見守ることも、また新鮮な喜びだったのだ。
彼は間違いなく自分達の未来を変える。大賢者は確信していた。
「イリューンという。今日からここで我々と共に暮らす」
厳かに皆に伝える。
「彼こそが、我々の……この星フェイトの希望の種だ」
.
最初のコメントを投稿しよう!