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そいつはいた
部屋の中央に
大胆にも堂々とした姿で
俺は一瞬思考が停止し
一歩も動くことができなかった
やつは俺を見てもおくせず
逃げもせずに挑発してきた
やつをみるのは久しぶりだ
この前は台所にいた
そのときは屈強な戦士である父が倒した
こいつはその仲間
いや家族かもしれない
今は父はいないが
俺が殺ってやる!
俺は急いで武器をとりにいった
長い柄のさきに平たい正方形の板のようなものがついている
昔から愛用しているものだ
部屋に戻っても
やつは同じ場所で同じ格好で待っていた
だいぶなめられたもんだ
俺はゆっくりと近づき
息を整え
意を決して
やつに武器を振り降ろした
殺ったと思った瞬間
やつは姿をくらました
やつはここで逃げるようなまねはしない
きっと近くの物陰に隠れたのだろう
俺はやつが隠れていそうな物陰の上で待機し
大きな振動を床に与えた
予想通りやつは出てきた
しかし予想以上に突然とびだしてきたので仕留めそこなった
やつは俺と一定の距離を保つ
この距離でみるとやつの恐ろしさがよく伝わってくる
漆黒の翼をもち
6本の手足がある
その手足には鋭いとげが連なり
殺っても殺っても殺りきれない生命力
やつは俺とのバトルに飽きたかのように
深い闇のなかに
消え去ってしまった
次に会ったときは覚えておけよ
ゴキブリめ
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