愛と平和と邪眼と魔王

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――――その村は魔物の群れに襲われていた。  村は一色、赤赤赤と赤で染め上げられ天高く上る火が死を意味しているかのように思える。  阿鼻叫喚が飛び交い、少しずつ薄れていく。絶望に染め上げられた村。カウントダウンのように消えていく命。  また、一人の命が散ろうとしていた。  その少女はゴブリンの群れから逃げていた。少し振り向くとゲスい笑い声のゴブリンたち。  逃げ切らなければ待っているのは死。死あるのみだ。が、少女は運が悪かった。右足が木の根に引っかかったのだ。 「きゃっ!」  打ち所が悪かったらしく、足に出来た傷口が傷む。  すぐ逃げようとしたものの、もうゴブリンたちは目と鼻の先。手遅れだった。  少女は死を悟り、目を瞑った。自分の死に様を直視したくないからである。  どうせ死ぬのなら、嫌な事を見ずに死にたいと、少女は痛みが来る事を想定し、歯を喰いしばったが、痛みは来なかった。  
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