⑮私、頑張ります

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だから、会うわけねぇし。 嫌な奴に嫌な態度して何が悪いんだよ。 「俺が永居 好人と言う事で、会おうと思ってるんだ」 そう、優司が言うとリサも賛同した。 「いいわ、私も友人として同行する。独りより絶対二人のがいいもの。丸め込まれてしまっても、ダメだから」 えっ……。 「だな、だなっ」 優司もリサも、やたら団結する。 この二人は、やっぱり似た者同士だな。 「好きにしてくれ…」 ありがたいけれど、もう俺にとったら、親戚なんてどうでもいいんだよ。 雫は俺のもんだ。 返せって言われても、絶対返さない。 誰が返すもんか……。 家に帰り、雫は何だか、はしゃいでいた。 採用通知と契約書に目を通して、月読の判を押す。 「コケ丸、私ね明日好人とお仕事行くんだよっ」 コケ丸をつついて、さかんに話し掛けている。 キモいな~、いつ見ても。 「何も言わないから、そっとしとけって」 「好人とお仕事、嬉しいな♪」 「はいはい」 雫は寝ころんだり、俺に後ろから甘えてきたり、何だか踊り出したり……。 「チョロチョロすんなって」 おまえの家は、ここなんだし。 いつも俺や優司やリサだって、いるんだし。 アルバイトだってあるし、他に考えたりする事は山ほどあるはずだから、いいよな。 何も伝えなくても。 あの家が無くなる事なんて、今はもう知らなくてもいい事のうちの一つだ。 「ちょっと、ここ来て座れって」 「はーい☆」 「この紙におまえの判を押しといた。お仕事頑張りますから、宜しくお願いしますって約束したんだ。いいか、遣り甲斐の有る仕事は、楽しい事ばかりじゃないから、遣り甲斐が有るんだ。分かるか?」 「ほへっ?」 雫は鼻を擦りながら、頭を傾げる。 「草むしりも掃き掃除も、覚える事はたくさん有る。でも俺がきちんと教えてやるから、上司の俺の言う事はちゃんと聞けよ。それが会社の仕組みだからな。分かったか?」 「うん、分かった☆」 偉そうに言うが、俺は上司でも認めてない奴の言う事は一切聞かん。 エゴだ、エゴ。 雫はカバンに契約書と、記憶ノートにタオルや帽子を入れる。 「お菓子も要るかなぁ?」 「ダメだ」 「チェッ!…チクショ」 雫は舌打ちをして、ぼやいた。 「おまえ、俺のマネすんな」 「えへへ、バレた☆」 雫はハニカミながら、俺の腕にもたれた。 ……チクショ、可愛い。
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