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だから、会うわけねぇし。
嫌な奴に嫌な態度して何が悪いんだよ。
「俺が永居 好人と言う事で、会おうと思ってるんだ」
そう、優司が言うとリサも賛同した。
「いいわ、私も友人として同行する。独りより絶対二人のがいいもの。丸め込まれてしまっても、ダメだから」
えっ……。
「だな、だなっ」
優司もリサも、やたら団結する。
この二人は、やっぱり似た者同士だな。
「好きにしてくれ…」
ありがたいけれど、もう俺にとったら、親戚なんてどうでもいいんだよ。
雫は俺のもんだ。
返せって言われても、絶対返さない。
誰が返すもんか……。
家に帰り、雫は何だか、はしゃいでいた。
採用通知と契約書に目を通して、月読の判を押す。
「コケ丸、私ね明日好人とお仕事行くんだよっ」
コケ丸をつついて、さかんに話し掛けている。
キモいな~、いつ見ても。
「何も言わないから、そっとしとけって」
「好人とお仕事、嬉しいな♪」
「はいはい」
雫は寝ころんだり、俺に後ろから甘えてきたり、何だか踊り出したり……。
「チョロチョロすんなって」
おまえの家は、ここなんだし。
いつも俺や優司やリサだって、いるんだし。
アルバイトだってあるし、他に考えたりする事は山ほどあるはずだから、いいよな。
何も伝えなくても。
あの家が無くなる事なんて、今はもう知らなくてもいい事のうちの一つだ。
「ちょっと、ここ来て座れって」
「はーい☆」
「この紙におまえの判を押しといた。お仕事頑張りますから、宜しくお願いしますって約束したんだ。いいか、遣り甲斐の有る仕事は、楽しい事ばかりじゃないから、遣り甲斐が有るんだ。分かるか?」
「ほへっ?」
雫は鼻を擦りながら、頭を傾げる。
「草むしりも掃き掃除も、覚える事はたくさん有る。でも俺がきちんと教えてやるから、上司の俺の言う事はちゃんと聞けよ。それが会社の仕組みだからな。分かったか?」
「うん、分かった☆」
偉そうに言うが、俺は上司でも認めてない奴の言う事は一切聞かん。
エゴだ、エゴ。
雫はカバンに契約書と、記憶ノートにタオルや帽子を入れる。
「お菓子も要るかなぁ?」
「ダメだ」
「チェッ!…チクショ」
雫は舌打ちをして、ぼやいた。
「おまえ、俺のマネすんな」
「えへへ、バレた☆」
雫はハニカミながら、俺の腕にもたれた。
……チクショ、可愛い。
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