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じゃあ、雫は何なんだ?
産んで失踪自殺してたら、一瞬でも産んでみたいと思った自分の子を見ないままじゃねぇか。
バカじゃねぇの?
で、見ず知らずの月読のおばあさんにその後を任せるだなんて……。
「勝手だな、どいつもこいつも。他人に人の子押し付けてよぉ。自殺?ラクしたいから死んだんだろ?頭がおかしくなるだと?自分が全部、そうなるように進めてきたんだろうが!」
俺は握り拳を更に強く握った。
「……好人、おまえ、本気でそう思ってんのか?他人の面倒みるのを、押し付けられたって。そんな事、言うなよ……」
優司は鼻をすすりながら、細々と言う。
「自殺ってな、本気の覚悟がなきゃできないと俺は思うから、ラクだなんて簡単に言ったら可哀想だ……、それに、その立場にならなきゃ抱えてる悩みだって、分からない事もあるんだ……、そう考えてやれよ……」
「月読のお宅も、嫌な噂を近所からたてられたりして、叔父様だって母親のおばあ様を守るために、つらい思いもしたそうよ」
「……」
静まり返る空間。
俺はもう、何も言えなくなった。
「誰の子だって、どこの子だって、いいんだよ。幸せが見つけ出せないなら、今幸せにしてくれる人と一緒に居たら。そうだろ?好人…」
「私たちは何も変わらないわ。だから、永居くんも変わらずに居て。いいわね?」
俺は黙って頷いた。
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