⑰私、いつも守られてる

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「これにするわ」 「メッセージは何て入れられますか?」 店員に雫は答える。 「アイラブユーがいいな☆」 俺はそれに対して、 「却下する」 店員と雫は俺を見た。 「えぇーっ!」 雫は声をあげた。 俺はそんなふうに雫に持たせたい訳じゃない。 あの堀河さんのおばあさんのブレスレットのように、緊急時の御守りとして持たせたいんだ。 何がアイラブユーだ。 そんなもん、誰が入れるかアホッ。 俺は店員に相談すると、店員はそういうお客は他にもたくさん居ると言い、引き受けてくれた。 「ここに彼女さんの名前。そしてエマージェンシーは緊急時連絡先、その下に彼氏さんの名前に電話番号でどうでしょうか?」 「いいねぇ、それでやってよ」 「では、3週間ほどで出来上がりますので。出来上がり次第、こちらからご連絡させて頂きます」 俺は、金を払い再び雫の手を繋いで帰る。 雫は車の中で、俺の買ってやった新しい携帯電話をいじくり回していた。 「住所変更もしたし、荷物もだいたいは運び出したし、携帯電話も俺の契約だから、何も問題ない。あとは何だっけ」 人に冷たく。 キツイ性格だと言われる、この俺が。 ここまでやってやるんだから。 この俺自身がビックリだ。 「ありがとうね、好人っ☆」 「明日には忘れるのが、痛いけどな」 「そんな事ないよ」 雫は嬉しそうに答えた。 自分にこんなに他人を思いやる気持ちがあったなんて。 むしろ、そういう気持ちを与えてもいいと自然に思えるだなんて。 思いもよらなかった。 何かして、相手を喜ばしたり。 何かから、守るだとか。 全然、意識した事のない感情だとかが自分に宿り始める。 何かが、俺の中でゴソッと変わるような気がする。 雫と居ると。
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