⑱私、ラブラブ

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雫が休みの日に、俺と優司、残りの二人で月読家の生い茂る庭の片付けに行く。 午前中に俺たちが草木を伐採して、午後から家の解体業者来るそうだ。 優司はチェーンソーで、太い枝やら樹やらを切り込む。 俺も草刈り機で、どんどん花や野草を切り刻む。 物凄い音をたてて、庭はどんどん何もかも消え去っていく。 雫の思い出を、俺が無くしていく。 何も知らずに雫は、俺の帰りを家で待っているのか。 「好人、大丈夫か?」 優司は俺に声を掛けるから、 「俺は何ともないが、雫を思うとな」 「そうだな、切ないな」 そう言って、俺の肩を軽く叩く。 残りの二人も、話していた。 「何か思いでの詰まった家が無くなるのって寂しいよな」 「どんな人が住んでたんだろうな」 雫と、雫の大好きなおばあさんが住んでいたんだよ。 作業が一通り終わると、解体業者が到着した。 優司が言う。 「こちらの作業は終了しましたので」 「ご苦労様でした」 解体業者全員が、家の前で並び、一礼をする。 そして、 「よし、はじめようか」 と、解体に取り掛かる。 あの中にはまだ、雫の荷物がある。 壊れて、剥き出しになる家の中。 おばあさんの荷物は一つもない。 見えるのは、雫の思い出。 「好人、もう行こうか」 優司の声に、俺は静かに車に乗り込む。 車の窓をコツいて優司は、 「あそこに居る人、あれが雫ちゃんのおじさんだよ」 俺に知らせた。 「血の繋がらないおじさんか」 俺はチラッと見たが、結局今更そんな奴を見ても俺にも雫にも一切関わりない。 「血が繋がってなくても、おじさんは雫ちゃんの幸せを願ってる。おまえに、幸せにして貰えると信じてる。俺は悪い人だとは思わない、あのおじさんを」 優司は外を見つめながら俺に言った。 「人にそんな事、決められたくない」 俺は呟く。
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