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家に帰ると、いつもなら玄関まですっ飛んで来る雫は、今日は来ない。
何だよ、お出迎えはもう無しか。
「ただいま」
部屋を覗くと雫はノートに何かを熱心に書いている。
「何やってんだ?」
「はぁう!好人だ。おかえりなさい!」
雫は慌ててノートを閉じた。
「何か隠したろ?」
「隠してないよ、えへへ☆」
「ふぅ~ん…」
俺はとりあえず無視してシャワーをいつも通り浴びる。
アイツ、俺に隠し事するなんて絶対許さないからな。
アイツが記憶力悪い分、俺がアイツの全部を把握しとかなきゃならないんだから。
しかし、雫は食事の時もテレビを見てる時も、話をしてる時も、とにかく寝るまでずっと俺の顔を不自然なくらい、見つめる。
「バカ、見すぎだろ。さっきからキモチ悪りぃな」
「えへへ☆」
「えへへじゃねぇ。ふざけてやってんだったら、お尻ペンペンだぞ?」
「えぇーっ!やだぁー!」
雫は俺の手を握る。
そんな姿が、また無邪気で可愛いと思える。
「明後日、またおまえは掃き掃除の仕事があるからな。今度は優司がずっと付いていてくれるから心配するなよ」
「好人は?」
「あのな、いつも一緒だとは限らないんだぞ?仕事はまた普段とは違うんだから」
「ブゥー!」
雫はまた口を尖らせて、少しすねた。
「ほら、寝るぞ」
でも、俺がそう言って手招きすると嬉しいそうに近寄ってきて眠る。
結局は、かまって欲しかったんだな。
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