⑱私、ラブラブ

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俺は頬杖を付いて、雫が落ち着き眠るのを待つ。 ふと、雫の家が壊れて崩れていくさまを思い出す。 何か胸が痛むってのは、こんな感じなんかなぁ。 俺は横になりながら、ギュッと雫を抱き締めた。 「…好人?」 「あっ、起こしたか?悪りぃな」 雫は俺の頭を撫でるから、ついでにキスしてやった。 「あっ、キスした」 「今度はおまえからしろ」 ……チュッ…… 雫も俺にギュッとしがみついた。 「おやすみのキス?」 「そうだ。朝はおはようのキスしような」 「じゃあ、いってきますのキスも?」 「そしたら、ただいまのキスもいるな」 これ以上イチャ付くと、身体がうずくからもう、寝よう。 それからしばらくは、何もない穏やかな日々が続いた。 仕事も順調で、雫は優司やリサ以外の会社の奴とも一緒に現場に行ったりと。 名前も顔も、忘れちゃうけど。 組む人間が毎回違うから、記憶障害だとはバレていない。 いつしか「雫ちゃん」と会社のみんながそう呼ぶようになっていた。 事務所で楽しげな、話し声が聞こえる。 「永居の相手は大変だろ?いつも鬼みたいな怖い顔して、言葉は悪いしキツイし。雫ちゃんは本当によく出来た子だよ」 そう雫に言って、周りを楽しませてる気でいるのは社長のバカ息子。 「えへへ☆誉められた」 雫は照れながら笑う。 「だって雫ちゃんは、永居くんのエンジェルハートだもんね」 リサが言うと、周りが笑う。 「何それ?癒し系ってか?」 「癒し系よ」 「あんな怖い顔して癒し系求めてんの?笑っちゃうな」 バカ息子の言葉に周りの事務の女たちが、ドッと笑っていた。 俺はわざと大きな音をたてて、会社の車の鍵を机に叩きつけた。 「只今、戻りましたけど!」 一瞬、ヤバいと事務所内が静かになる。 「あっ、好人っ♪」 リサは近寄り鍵を受け取り、 「お疲れ様」 普通に答える。 「おう」 リサには俺も頭が上がらない。 雫にいつもお弁当を作って来てくれて、空き時間には、いつも側に付いて居てくれるから。
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