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出来上がったばかりのペンダントを仕事帰りに取りに行き、帰るとすぐさま雫を呼ぶ。
「ただいま。雫、ちょっとおいで」
相変わらず雫は何かを一生懸命書いているみたいで、
「聞こえないのか?」
俺はまた部屋を覗く。
「おまえ、俺の言う言葉にはきちんと返事しろ」
「ご、ごめんなさい」
雫はまた慌ててノートを隠す。
「一つ先に言っとくが、おまえは俺よりアホだから、おまえの分まで俺は脳ミソを働かさなきゃいけない。要するに、おまえの記憶は俺が記憶しているからこそ、おまえの生活が成り立つ。つまりは、おまえは俺に隠し事は一切したらいけないんだ」
「やだぁー!」
「やだじゃない、マジにだ」
俺は、腕組みをして雫を見下す。
「隠し事なんて、すぐ忘れちゃうもんねぇだ」
「だから、隠し事はするな」
俺は更に念を押す。
「やだぁー!やだぁー!」
はいはい、無視無視。
雫は、俺の胸に何度も拳骨で殴る。
「俺の言う通りにするって、雫が言ったんだからな」
「もぉー!もぉー!」
はいはい、知らん知らん。
背中をバシバシと叩かれても、痛くも痒くもない。
「チェッ!…チクショ!胸くそ悪りぃ!」
雫はそんなふうに言うから、笑いが込み上げた。
「おまえが言うと、全然悪意を感じないな。そんな可愛い言い方じゃ、ダメだ」
爆笑して、ギュッと抱き締めてやる。
そして雫が落ち着いた頃合いに、俺はペンダントを雫の首に引っ付けてやった。
「ほにょ?」
「遅くなったけど、俺からの雫への入社祝いだ。と言うより、御守りだ」
「御守り?」
雫は不思議そうに、彫られた文字を指で何度も辿る。
ベッドに腰掛けて、雫を隣に座らせる。
「私の名前は月読 雫。緊急連絡先は永居 好人。俺の携帯番号。電話して下さい。って彫られてるんだ。分かるか?」
雫は横に頭を振る。
「おまえが万が一、独りで道に迷った時に、どっかの親切な人が俺に電話をしてくれるようになってる」
「携帯あるやん」
「おまえさ、携帯ん時に無視るだろ?メールも電話も」
「えへへ☆」
「こら、笑い事じゃねぇぞ。とにかく、このペンダントは身元が分かるようになってるから、いつも首にかけてろ。いいな」
「うん、好人大好き!」
雫は俺に抱き付くから、
「大好きなら、俺の言う通りにしろ」
「するぅー!絶対するぅー!」
さっき、いやだって言った癖に。
調子いいな、全く。
「私、ラブラブだね?」
「ラブラブだ」
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