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俺の行きたい場所も、雫の見たい場所も、二人で行ったり、優司とリサと四人で出掛けたりした。
楽しい…楽しいって言うから、俺は毎日雫は楽しくて、もう月読の事なんて忘れてるもんだと思っていた。
紅葉のシーズンが終わると、落ち葉はただの枯れて邪魔なだけの落ち葉で、片付けてやらなきゃならない。
雑草は雪に埋もれる前に刈り取ってやらなきゃ春に新しい草が生えてこない。
木々は冬囲いをしてやらなきゃ、冬の冷え込んだ強い風に耐えしのげない。
それが終わると、本格的な冬が来て造園業は少しだけ、毎日にゆとりができる。
「クリスマスは、やっぱりパーティータイム?」
優司は俺にまとわり付いてくる。
キモチ悪いんだよ。
「あぁ、うざい…」
俺は遠くを見る。
「おまえ、有休取ってるんだろ?二日間も。俺はそのおかげで、クリスマスはビッチリ仕事だぞぉ?」
背中をつついて言われる。
協力するって言ったんだから、何も言わずに協力しろよ。
「だから?」
「だから!つまり!…やりまくりでしょ?うふふ☆」
優司の発言に俺はハサミを取り出した。
「おまえのその口、ズタズタに切り込んでもいいか?縦にか、斜めか、横からか」
実は、ちょっと図星を付かれたふしがあり、それを悟られないように俺は必死で照れ笑いを我慢して、怒りを表現する。
「いやん、やめてん!無理矢理は痛いからん、優しくしてねん!」
優司はふざけて俺に言うけど、何だか想像してしまうから、マジに勘弁してくれ。
「バカらしい」
やっとの思いで吐き捨てる、この俺。
協力者に、報告をする義務はない。
ただ、クリスマスも年に二日間しかない楽しい日なんだと改めて雫に教えてあげたくて。
そういう日は、自分の大切な人と過ごす特別な日なんだって。
そして、そんな特別の日は、お互いの大切なものを確かめ合う日にしたい。
というのは、俺の率直な欲望なんだけど。
きっかけがないと、勢いがつかねぇから。
それで切り抜けたい…みたいな。
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