⑳私には何も無い

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さてと、明日のクリスマスはどう雫と過ごすかな。 どっか、連れて行ってやりたいけど。 俺としては、まったり二人で部屋で過ごしたい。 クリスマスプレゼントで、雫のお茶碗と箸だとか一式揃えてやりたい。 あぁ~あ、何でこんなにも好きになっちまったかな、俺。 アイツが何か俺にしてくれた訳でもないのに。 俺は剪定から戻り、雫が会社から戻るのを待つ。 雫は今日は午前中から、優司と堀河家にイルミネーションの飾り付けに行っている。 もう、俺よりは早めに帰って来てるはずだが。 事務所の前を通ると、 「あら、お疲れさま。何してるの?」 リサが何気に俺に声を掛けてきた。 「いや、雫を待ってるんだけど。道でも混んでんのかなぁ」 「えっ、もうとっくに前田くんたちは戻って来てるわよ」 「はっ?じゃあ雫はどこ行ったんだよ」 「…おかしいわね、お手洗いかしら?」 ったく、世話がやけるな~! 俺が戻るまではリサの側に居ろって、伝えてあったのに。 「いい、携帯に電話するから」 俺は雫に着信を入れる。 ……? 全然出ねぇや。 メールもついでに入れておくかな。 「あれ、好人。まだ、帰らないの?」 優司が帰り支度を済ませて、やって来た。 「雫、待ちだ」 「へっ?いつも、ここで待ってるのになぁ」 優司とリサは顔を見合わせる。 「私、ちょっと見て廻ってくるわ」 リサは少し慌てて探しに行く。 「まさか、会社内で行方不明?俺も見てくるわ」 優司も、早足に逆方向へと行く。 俺は事務所前で待機だ。 クリスマス前に、人に迷惑をかけるとは。 後で、厳しく叱ってやらなきゃならんな。 俺は雫の父親みたいだな。
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