⑳私には何も無い

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何度も会社内を見廻り、探しまくるが。 「ちょっと、まずいなぁ」 優司は俺より先に呟く。 リサや事務員たちも探すが、やっぱりどこを探しても居ない。 「居ないわね。自宅には?」 「あんなアホが独りで自宅に戻れる訳ないだろ」 俺は苛立っていた。 携帯電話に何度も着信やメールを入れても無視だ。 優司もリサも、会社の奴らも探し廻ってくれてるのに。 ろくに返事もなく、現れる気配もない。 何のために携帯電話を持たせたと思ってんだ。 すると、社長の息子がやって来た。 「今夜は吹雪くらしいぞ。ホワイトクリスマスだってさ」 ホワイトクリスマス? なめんじゃねぇぞ、こら! 俺がこんな気持ちでいるに、バカ息子がお気楽な事を言うもんだから、睨み付けてやった。 「雫ちゃんが居なくて、永居くん気が立ってるから。もう少し言葉を慎んでちょうだい」 リサはバカ息子に小声で言うが、バカなんだから、通じねぇよ。 「永居が何かまた無理な要求でもしたんじゃねぇのか?おまえは態度や言葉がキツイんだよ。だから、傷付くんだよ」 バカ息子は笑って言うもんだから、俺は静かにキレた。 「だから何だ?誰にでもそんな態度してると思うなよ」 「じゃあ、人を選んでんのか?性格悪いな。こんなんじゃ、あんな幼げな雫ちゃんは逃げるわな」 「うるせぇな、知った口叩くな。あんま言うと、マジに殴るぜ?俺はいつでも売られた喧嘩は買うからよ」 「なんだと?」 バカ息子は俺の前に立って、威嚇してくる。 俺から逃げる? そんな訳ないよな、雫。 俺はおまえに無理な要求したか? 言葉も態度も、おまえには人一倍優しくしてただろ? いつも……。 「もめたら何か解決する訳?みっともないだけよ。いい加減にしなさいって」 リサはバカ息子を無理矢理、引っ張って去って行った。 「心配なのは分かるが、人にあたるな。好人」 優司は俺をなだめる。 「……ムカつくんだよ」
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