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「とりあえずは、おまえはもう家に帰れ。会社内はリサ達が遅くまで残るから任せてさ。俺は月読のおじさんに連絡取ってみるよ。だいたい行く範囲は決まってるはずだから」
「すまんな……」
「もしかしたら、月読の自分の家に行ってるかも知れないだろ?その辺りは俺が探すよ」
「そうだな……」
俺は頭をかかえて、深い溜め息をついた。
ホワイトクリスマスって、確かに外を見ると空には雪雲らしきものが見える。
風も強く吹き始めて、最悪な天候になるのが目に見えて分かる。
「大丈夫だ。すぐ見つかる。だから、あんま怒ってやんなよ」
「……どうだかな」
俺はジャンパーを羽織って、独りで家に帰る。
時間は刻々と流れていく。
家の中で独り。
テレビなんて、見る気も失せる。
食事も何だか味気なくて、俺は途中でゴミに捨てた。
携帯電話に何度も着信を入れる。
メールもだ。
優司から連絡が入った。
「月読のおばあさんの家の近くで、雫ちゃんらしき女の子を見たって。近所の人が教えてくれたぞ。やっぱりフラッシュバックで、ここ来てるな」
何だよ、アイツは!
家に戻れるんじゃねぇか!
「何時頃?」
「夕方頃だって話だ。仕事終わってすぐだろうな」
「そうか……」
俺はカーテンを少し開けると、厚めの雪が降り始めていた。
こんな日にアイツ。
明日のクリスマスを俺がおまえに、どんだけ喜ばしてやろうかと、思ってたと思うんだ。
リサからも連絡があった。
「さすがに22時までは粘ったけど、セキュリティの関係で、これ以上は会社に居られないから、帰るわね」
「悪いな、遅くまで」
「気にしないで」
雪はどんどん降り積もる。
俺は相変わらず落ち着かずにいた。
こんな寒い日に、何処に行ったんだ?
早く帰って来いよ。
早く、早く、早く……。
俺はベッドに横になり、あれやこれやと雫の行きそうな場所を思い出す。
思い出す記憶が有りすぎて、頭がパンクしそうだ。
いつの間にか、アイツとのたくさんの出来事が俺の頭の中に詰まっていた。
おまえみたいな奴は、今までに一度も出逢った事のない、どうしようもなく扱いづらい女だよ。
すぐに忘れちゃうだとか言ってるから、俺はいつもおまえが一体何を考えてるのか、不可思議な行動に何度も惑わされていた。
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