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けれど、あまりにもたくさんの人に心配をかけた雫に怒鳴り付けてしまった。
「ふざけんな!!何やってんだ!!」
雫はビックリしながら、起き上がり涙を流す。
「いい大人が、どれだけの心配と迷惑を他人にかけたと思ってる!」
「ふぇっ……ふぇっ……ふぇぇん!!好人、ごめんなさい…ごめんなさい!…」
雫は、俺の胸に泣き付こうとするから、
思わず振り払い、頬を引っぱたいた。
パシッ!……
「うわぁぁん!……うわぁぁん!……」
雫は大きな声で泣きわめく。
「泣いて済むと思うな!ぶたれるのは当たり前だ!俺にこんな思いをさせたんだから!」
今は、どんだけでも泣いたらいい。
理由や言い訳は後で、ゆっくり聞いてやる。
ただ、俺だって凄く心配して不安だったんだ。
だから、怒ってやらなきゃ。
こんな事をしたら、こんな思いをするんだと分からせてやらなきゃ。
忘れて欲しくない。
二度とこんな思いは御免だ。
「ごめんなさい……ごめんなさい……好人、ごめんなさい……!」
真っ赤な顔をして、大粒の涙を落とす雫を、そっと静かに抱き締めた。
「もう、勝手にどこかへ行ったりするなよ。分かったか?」
「うん……ごめんなさい」
雫はそう言うと、ホッとしたのか、またグッタリと俺の胸の中で意識を無くした。
毛布に雫をくるませて、ゆっくり抱きかかえて車に乗せる。
助手席のシートを倒して、荷物を受け取る。
「永居さん、わしらはなんせ男じゃから、女の子には男にゃ分からん部分をたくさん持っておる。何も話を聞いてやれんくて悪かったね」
「いえ、そんな…」
確かに、単細胞な男には理解できないな。
「とにかく暖かくしてあげて下さい」
「はい。また元気になったら伺います」
俺は頭を深々と何度も下げて、優司の待つ自分の家に帰る。
優司とリサには、とりあえずはメールを送っておいた。
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