⑳、私には何も無い(2)

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虚ろな目で、雫は俺を見ている。 「俺がもっと温めてやる」 キスから温めてやる。 胸も腹も、俺の身体で温めてやる。 震える指先も、冷えた足も、全て温めてやる。 身体を密着させながら、俺の体温を逃がさないように、ゆっくり、ゆっくり布団の中で脱がしていく。 そして、俺も雫も布団の中では丸裸になった。 「好人、温かい…」 小さい息を吐いて、雫は呟く。 「俺の身体が温かいのは、おまえが凄く好きだからだよ」 雫の目から、涙の雫がこぼれ落ちた。 その雫はどんな意味なんだろう。 「好人が好きなのにクリスマスプレゼントに、私は好人に何もしてあげられなくて…私には何も無いから…どうしたらいいか分からなくなって、おばあちゃんの家に行ったの。…そしたら何も無くなっていて、また訳が分からなくなって、おばあちゃんの家のお庭に似た、あのお寺に行けば何か閃くかと思ったの…でもあのお家から、おばあちゃんの声が聞こえたの…」 「おばあちゃんの声?」 あの保護してくれた、おじいさんの声がおばあさんの声に聞こえたのか。 「あそこにおばあちゃんが居たから。お庭から、おばあちゃんの声を聞いていたの。あそこに居れば、ずっとおばあちゃんと居られる。…ごめんね、好人。私、おばあちゃんも大好きだから、このまま好人の前から消えるねって…」 「雫のバカ!あれは、おじいちゃんだろ?…バカだな本当に…」 俺は涙を浮かべて、雫のうなじに顔を埋めた。 おまえは、男女の見境いも付かないくらい、分からなくなっていたのか。 「俺が欲しいモノは、おまえだよ。他には何も要らない。何もしてくれなくていい。おまえのおばあちゃんは、もう死んだんだ。そして、おまえのこの中にいつも居るんだ」 俺は雫の胸と頭に、指を差す。 「へっ?この中に?」 「そうだ、この胸の中に、この頭の中に居るんだ。そんで、おまえが居る場所はこの俺の胸の中だ。だから、ここからいつも問い掛ければいいんだよ」 雫は理解できたみたいで、恥ずかしそうに俺にギュッと強くしがみついた。
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