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翌年、優司はできちゃった婚をした。
だから、俺よりも意外や意外の優司が先に落ち着いた。
リサも仕事から離れて、今は専業主婦だ。
子どもも生まれて、育児の傍ら、時々簡単な料理教室を開いている。
雫もそれに参加して、毎晩教わった料理を俺に食べさせてくれる。
優司と俺の二人から、雫が加わり、その雫の事で三人がまとまり、リサが加わり、いつの間にか四人になった。
定期的に連絡を取り合いながら、月日は短いスパンで流れて。
知り合って、あれからもう三年経った。
俺と雫は、雫の誕生日に入籍をした。
その時も、雫は嬉しいと涙を流した。
今日は久しぶりに四人で集まり、河原でバーベキューだ。
優司はアウトドアにはまっていて、十も離れた若い奥さんと子どもを、連れ回しているらしい。
「おとっつあん、肉ばっかは身体が臭くなるから、あんまり食べないで」
「肉を食わせろー!ガゥー!」
優司はリサの子と、自分の子どもを追いかけ回す。
「キャー!」
おまけに雫にもやるから、
「キャー!」
同じように逃げる。
リサは昔の話を俺にしてきた。
「あなたを選ばなくて正解だったわ」
「そう?」
「私は結婚して子どもが産みたかった。年齢も四十目前だったから。でも、あの頃のあなたでは、経済的にも内面的にも、正直支えてもらえるまでには時間がかかると思ったの」
「俺では無理だったって?」
「そうね、あなたはいつも私に甘えていたでしょ?」
リサは何でも出来るから。
世話好き、気遣い上手だと思ってた。
「頼りなかったか、俺では」
「そうね。もっと大きな胸に飛び込みたかった。あなたは小さ過ぎた」
「そうか…。で、今はどうかな?」
俺ももう四十前だ。
「雫ちゃんのおかげで、あなたは変わったわ。いいんじゃないかしら。今のあなた。益々入籍して、あなたは変わっていくから。私たちはこれからも、バックアップするわ」
「ありがとう」
そんな言葉が、素直に心の底から言えるくらい、俺は優しくなったのかな。
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