雫エピローグ

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雫エピローグ

お城の中には、永居 好人というお殿様がいました。 お殿様は、私にとても親切にしてくれました。 牛丼やジュースだけじゃなく、見ず知らずの私と一緒に住んでくれて、仕事の面倒から、大切な友達まで私に与えてくれました。 キスの仕方からエッチな事も教えてくれて、結婚もしてくれました。 お殿様の子どもは、どんな顔で生まれてくるのかなぁ。 玉子みたいにコロンと出てきて、鬼みたいな顔してるのかなぁ。 なぁんてね。 私は記憶障害…本当は違う。 おばあちゃんやおじさんが、血の繋がりがない事はとっくに知っていた。 学校は義務教育しか出てないし、身寄りのない私が周りから親切にしてもらえるには、頭が悪いふりをするしかなかった。 忘れた、知らない、分からない。 そう言って生きていくしかなかった。 嘘はやがて本当になって、嫌な記憶はどんどん薄れていった。 こんな私は、小さい頃。 物影からこっそり聞いた母のように、いつかは失踪自殺をするつもりだった。 何もない、最初から必要のない人間なんて、この世にいる意味なんてないのだから。 キスだって、セックスだって経験はある。全部、行きずりだけど。 好人は、何も知らない。 私が好人に対して思う事は。 バカなふりをした私を、どれだけ支えてくれるのか、今とその先が知りたい。 人は信じない、心の底から愛したりはしない、そんな孤独な私をこの人はどれだけの愛を持って、継続して注いでくれるのか。 私も母のように、いつか我が子を捨てる日が来るかも知れない。 私自身が死ぬかも知れない。 その時に好人は、どう私に優しく接してくれるのか。 この男に、人生を賭けてみたい。 玄関の扉が開く。 私はまたバカなふりをして、駆け寄る。 「好人っ♪おかえりぃ☆」 「ただいま、どうだ腹の子は?」 「うん、コロンコロンしてるぅ☆」 「そっか。飯にしよっか」 「うん!」 永居 好人に賭けてみたい。
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