⑤私、思い出せない

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会社へと戻る間も。 午後からの仕事の間も。 帰りの車の中でも。 雫をどうするかを迷っていた。 出逢ったのは、昨日の今日なのに。 何となく、手元に置いて置きたいような。 そうでないような、面倒くさいような。 クソっ…。 他人の事なんてどうでもいいはずなのに。 いつもはそうやって当たり前のように思えるはずなのに。 ずっと、理想だったリサと別れて。 やっぱり俺は寂しいのか。 それを、埋める誰かを側に置いておきたいだけなのか。 気が利きいて、流れをうまく良い方へ持っていき、誰も傷付かないようにできるリサに今朝のように、少しでも助けられると。 終わっているのに、何か未練たらしい気持ちも生まれてしまう。 女々しいとは、こういう気持ちだな。 車を駐車場へ停めて、雫の待つ俺の部屋へと向かう。 玄関の鍵を開ける。 何か俺は、雫を監禁してるみたいだな。 自分の勝手な気まぐれで。 「好人、おかえりなさい」 「おう、ただいま」 雫は退屈だったのか、玄関までやってきた。 「雫、今夜はどうする?やっぱり家に帰るか?住所は分かったから送ってやる事はできるが」 「帰り道分かったんだね」 「まぁ、そんなとこだ」 「うん、分かった。帰る」 帰るのか。 あっさり言われてショックだった。 俺の名前、せっかく覚えたのにな。 「じゃ、またシャワー浴びるから、着替えて待ってろ。飯、昨日よりいい店連れて行ってやるからさ」 「うん、待ってる」 何か…変な気分だ。
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