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会社へと戻る間も。
午後からの仕事の間も。
帰りの車の中でも。
雫をどうするかを迷っていた。
出逢ったのは、昨日の今日なのに。
何となく、手元に置いて置きたいような。
そうでないような、面倒くさいような。
クソっ…。
他人の事なんてどうでもいいはずなのに。
いつもはそうやって当たり前のように思えるはずなのに。
ずっと、理想だったリサと別れて。
やっぱり俺は寂しいのか。
それを、埋める誰かを側に置いておきたいだけなのか。
気が利きいて、流れをうまく良い方へ持っていき、誰も傷付かないようにできるリサに今朝のように、少しでも助けられると。
終わっているのに、何か未練たらしい気持ちも生まれてしまう。
女々しいとは、こういう気持ちだな。
車を駐車場へ停めて、雫の待つ俺の部屋へと向かう。
玄関の鍵を開ける。
何か俺は、雫を監禁してるみたいだな。
自分の勝手な気まぐれで。
「好人、おかえりなさい」
「おう、ただいま」
雫は退屈だったのか、玄関までやってきた。
「雫、今夜はどうする?やっぱり家に帰るか?住所は分かったから送ってやる事はできるが」
「帰り道分かったんだね」
「まぁ、そんなとこだ」
「うん、分かった。帰る」
帰るのか。
あっさり言われてショックだった。
俺の名前、せっかく覚えたのにな。
「じゃ、またシャワー浴びるから、着替えて待ってろ。飯、昨日よりいい店連れて行ってやるからさ」
「うん、待ってる」
何か…変な気分だ。
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