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雫を車に乗せて、ハガキの住所をナビに登録する。
だいたいは、場所は分かった。
「雫は何でも食べられるか?」
「うん、食べられる♪」
じゃあ、たまたま国道脇に見えた回転寿司へと入る。
雫は嬉しそうに、一番安い玉子の寿司ばかり食べている。
「玉子好きか?」
「玉子好き。好人も、ゆで玉子みたいで好き」
意味分かんねぇし。
「ツルツル、ムキムキゆで玉子~♪」
俺は辺りを見渡して、
「みんなが見るから、突然歌うな」
と小声で教える。
「プルプル、ツヤツヤゆで玉子~♪」
「やめろ。一体何の歌だ、それ」
「好人の歌だよ」
雫じゃなければ、俺はとっくにキレてるぞ。
「あっそう」
そんなふうで、一人でどうすんだよ、これから。
「雫は記憶力が悪い以外は普通何だろ?」
「普通?」
「いや、すまん。変な聞き方したな。例えば発達障害だとかさ、重い脳の病気だとか」
「私、そんなふうに見えるの?」
「うそうそ、今のは無し」
「健康だよ」
雫はそう明るく笑って寿司を食べる。
「友達とかは居るの?」
「いるよ。でもみんな仕事が忙しいから、ずっと会ってないよ。だから忘れちゃった」
「まぁ、会わないでいると忘れても無理ないよな」
当たり前の事は言っている。
知能遅れや言語障害はないみたいだ。
「おばあさんはどんな人だったんだ?」
「優しくてね、いつも美味しいご飯作ってくれてね、ずっと一緒に居てくれてね、 楽しい話をたくさんしてくれてね …大好きだったの」
「そうか、おばあさんの事は忘れてないんだな」
「好きな人だから」
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