⑥私、知らない

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好きな人か…。 「悲しかったろうな、突然大好きなおばあさんと死に別れてしまって」 「うん…」 雫は食べるのを止めて、うつむいて黙ってしまった。 「ぶっちゃけて言うと、雫はそんな記憶力が悪くて一人で生活できるのかって俺は思ってる。施設だって、どんな施設に入れられるか分からないだろ?」 「……」 「精神病じゃないから、そんな所には入れない。アルツハイマーの年寄りでもないから、老人ホームは無理。普通の孤児施設じゃ、子どもじゃない訳だからな」 「いいよ、一人で」 「俺はおまえみたいなのは、一人では生活できないと言い切れる」 「どうせ、みんな死ぬんだから。一人になれば死ぬチャンスたくさんあるもん。おばあちゃんと一緒に居たいもん」 「何言うんだ?」 「何もかも頭から忘れてしまうなら、自分もこの世から消えてしまえば、手っ取り早いから」 「人間の生と死を簡単に言うな」 俺は雫の頭をコツいて少し怒って言った。 コイツは、意外と性格が暗いんだな。 ヘラヘラ笑って、隠してるんだな。 様々な悲しみや辛さを。 きっとたくさん有りすぎるから、記憶が消されていくのは雫にとったら調度いいのかも知れない。
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