⑥私、知らない

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俺は雫の手を無理矢理引っ張り、雫の部屋へともう一度向かった。 「好人、痛い…。何故怒ってるの?」 部屋の灯りを付けて、雫をほおり込んだ。 「何するの!」 近くに転がる大きめなカバンに、俺は雫の下着や服を適当に鷲掴みにして、入れ込む。 「後は何が要る…」 「好人?」 立ち尽くす雫に俺は決めた。 「おまえは俺と住む…」 「えっ?」 「今日から俺の家が雫の家だ。いいな?分かったか?」 雫は俺のものすごい表情にビクつきながら、うなずいた。 自分が寂しいとか、そんな気持ちは俺の中では、その時には消えていて。 ただ、雫の存在を否定された事に頭にきていた。 有り得ない。 こんな扱いを、唯一の身内にされるだなんて。 例え記憶に障害があっても、思い出は思い出だ。 確かに、おばあさんは身内からしたらみんなのおばあさんだが。 雫にとっての大切なおばあさんはたった一人しかいないんだ。 それを、こんなふうに雫から奪い取って、しかもその後の雫の面倒はみないだなんて…。 ムカつくにも、程がある!
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