⑥私、知らない

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とりあえずは必要な物だけ持っていく事にした。 後は、追々俺が、雫の荷物は運び出す。 冷静になった時に、気が付いた。 自分はこんな扱い、親にもされた事はない。 それを他人の事なのに、雫の側に居て痛感した。 心の底から。 雫の家を出る時に、 「ちょっと待ってろ…」 俺はまた、おばあさんの部屋へ行った。 見渡しながら、俺は自分のばあちゃんの事を思い出した。 俺も可愛がってもらった記憶はある。 親戚とか、いとこが全員ばあちゃんの家に集まり、ばあちゃんの部屋でトランプやったりお菓子食べたり…今でも楽しい思い出だ。 雫はそういうの、なかったんじゃないのかって俺は思うんだ。 雫のおばあさん。 大切な雫を、この家から出させてしまうのを、あの世から恨まないでくれよな。 恨むなら、親戚を恨んでくれ。 トランプやったりお菓子食べたりは俺がする。 これからは俺が雫と住むよ。 俺は手を合わせて、深々と一礼して、雫の元へと向かった。 「行くぞ、雫!」
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