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さすがに、仕事場で優司に相談しようと思い始めた頃に、俺の疲れた表情で先に優司が声を掛けてきた。
事情を話すと。
「何でそういうの計画持ってやらないんだ。犬や猫じゃないんだから拾って持って帰ってきて、育てられませんでしたで、済まないぞ?」
「分かってるって」
「っていうか、好人がそんな事までするなんて珍しいじゃん?どうしたんだよ、いつも情のない冷たいおまえが」
情がない、冷たいって…。
まぁ、深く自分が他人からどう思われてるかなんて気にした事もないが。
「実はさ、家に送り届けた時に、雫の家の中にお邪魔したんだよ」
「あら、大胆」
「正直引いたよ、身寄りがいないだとかそんな事よりも……」
俺は優司に1から雫の素性を説明した。
普通に有り得ない。
誰が聞いたって、そう思う。
優司は俺と違い情にあつい男だ。
だからか余計に雫の話を聞いて、自分の事みたいにムカついていた。
そして優司を連れて、俺は自分の家に帰る事にした。
雫が来て、もう1週間は立つ。
そろそろ、優司を紹介しよう。
「雫は小さな子どもみたいなもんだから、あんまり変な事を言ったりすんなよ」
「おおっ?…雫ちゃんって言う名前か。…可愛いじゃねぇか★」
俺は優司を睨み付けた。
何か……心配だな。
部屋の玄関の扉を開ける。
「ただいま、雫」
「好人っ、好人っ♪」
餌に吊られた仔猫みたいに、駆け寄ってくる。
しかし見慣れない優司に、後退りした。
「後退りされた。ショック」
「普通だろ」
「そうだろな」
「雫、今日は会社の友人を連れてきた」
雫は、黙って俺の方を見る。
「大丈夫だ。見た目は遊んでそうだが中身は善いヤツだ」
「好人のお友達?」
「そうそう。時々こうやって家に来るからな。ちょっとクドイかも知れんが覚えくれよ」
「うん」
不安そうに、俺の腕の後ろに隠れて優司を見る。
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