⑦私、ここに居たい

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雫の反応と優司の反応に、自然と笑いが込み上げる。 「優司です。はじめまして」 柔らかく優しく優司は笑って雫に挨拶をした。 雫は俺をジッと見る。 「大丈夫だ」 「うん」 雫は俺の一言で、優司に自己紹介をした。 「月読 雫です」 「仲良くしてね」 「はい」 ……よかった。受け入れたか。 「お茶かジュースどっちがいい?」 「茶でいい。悪いな」 優司は腰を下ろした。 「雫はオレンジジュースだよな?」 「うん。自分でやる」 雫はオレンジジュースを取り出していた。 「はい、茶」 「ありがと、悪いな」 優司は小声で言った。 「おまえ、全然可愛いじゃん」 「はぁ?」 俺は惚けた。 「雫ちゃんだよ」 優司がそう思うのも無理ない。 だってコイツはこういう、ちょっと危なっかしい頭の弱い天然ボケみたいな女が好きだから。 俺とは対象的だ。 「ねぇ、好人」 雫はオレンジジュースを片手に俺の隣に座って、俺の耳元で言う。 「ノートにメモする?」 「そうだな、ノート貸してみろ」 カバンからノートを出して俺に手渡した。 「何それ?」 優司は身を乗り出して、ノートを見る。 「雫の記憶ノートだ。ちょっとこれに名前を書いてやってくれ」 「俺の?」 「忘れないために」 「分かった」 雫は不思議な顔をして優司を見る。 優司も雫の顔を見ながら書き込む。 「前田 優司」 「ひらがなも」 「分かった……まえだ ゆうじ」 「前田 優司さん?」 雫は言った。 「そうそう、俺の友達だから忘れるなよ。分かったか?」 「うん、分かった」
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