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優司もリサと同じで誰からも好かれる男だ。
女はだいたい優司に惚れる。
雫はどうなんだろ…。
やっぱり雫も優司の優しさを知ったら、好きになるのかな…。
覚えろって自分で言ったけど、明日には忘れて欲しいとも思ったりもして。
「好人、もう雫ちゃんと結婚したらどうだ?」
ブッ!……
「何を飛んだ話してんだよ、バッカじゃねぇの?」
俺はお茶を吹き出した。
雫はティッシュで俺を拭く。
「いい。自分で拭くから」
「うん」
「何でだよ、一番手っ取り早いだろ?」
「冗談言うな。まず愛がないだろ、愛が!」
「愛なんて、後から知って出来てくもんだろ?」
「おまえと一緒にすんな」
「正式に妻にすれば扶養手当で多少は給料も上がるし、あかの他人じゃなくなる訳だから身内から何も言われたりしないぞ」
「身内?あぁ、あの腐れ親戚どもか?」
「腐れていようが雫ちゃんと血の繋がりがある唯一の親戚だ。おまえが現に雫ちゃんを、あの家からここへ移した事も親戚は知らない訳だろ?もし何か問題が起きたらどうするんだ?」
「問題?そんなモン、あんなふうに荒らされた家で、独りにさせる方が外道だろが。どうせ、雫の事なんてアイツらクズどもには今更、興味もない事だろ」
「違う。もし亡くなったおばあさんの遺産が雫ちゃんの受け取りになっていたとしたら?間違いなく親戚は雫ちゃんへの態度を変える。そしておまえは遺産目当てで近付いたと、訴えられるぞ?」
「そんな訳ねぇし、誰が他人の遺産を目当てにするかよ」
「外道だろうがクズだろうが、血の繋がりは揉め事の要因にも成り兼ねん。もっと最悪な状況を考えて、物事は進めた方がいい。何か問題が起きた時のためには、一つ一つ理由を必ず作っとかなきゃ、言い訳もできんぞ」
「そうだな」
…納得。
優司は雫に優しく問いかけた。
「ねぇ雫ちゃん、好人は好き?」
「うん、親切だから好き」
「好人のお家と、おばあちゃんのお家とどっちがいい?」
「分かんない」
「そうだなぁ、どっちが寂しくない?」
「好人のお家」
ほらね。って顔をして優司は俺を見た。
「好人のお家、ずっと居たい?」
「居てもいいなら、私、ここに居たい」
「もう一度聞くけど、好人は好きだよね?ずっと一緒に居たいんだよね?」
「うん」
何か、優司に言わされてる感たっぷりだな。
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