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「そうだったんですか?聞いた事もないので、大変驚きました」
「ですよね。雫さんには障害がありますからね、ご挨拶遅くなりまして申し訳ありませんでした」
「いや、記憶障害とは言え、こちらこそ存じ上げずに申し訳ない」
簡単に言うんじゃねぇよ、クソオヤジ。
雫の事なんかに、興味ねぇくせに。
「おばあ様の法要も終わったと伺いまして、喪もまだ開けないうちに失礼を承知で、雫さんに正式にプロポーズをしたところ、快く受けてくれまして。うちの家族は大変喜んでおります。まずはそちらの報告という事で、一応雫さんの唯一のお身内の方に、僕からお電話致しました」
凄い大嘘だな。
よく、そんな話が突然思い浮かぶもんだよ。
「そうでしたか、おめでとうございます」
「式は、おばあ様の一周忌過ぎた頃に予定しております。今は新築の家を探して、雫さんと式まで指折り数えております」
「それは、本当に喜ばしい限りです」
何が、喜ばしいだ。
ふざけんじゃねぇよ。
まるで、他人ごとだな。
「実は、おばあ様の大きな家に雫さんを独りにさせるのは僕は心配でたまらないので、できたらもうこれを期に僕の家で同棲という形を取りたいのですが、お許し頂けますか?」
「それは、もちろん。雫にこんなしっかりした方が付いていて頂けるのなら、この先も、こちらも安心です」
おまえら、身内が見捨てたんだろ。
恥を知れ、恥を!
「雫さんを必ず幸せにします。ありがとうございます」
おいおい、何を言ってくれるんだ。
俺は間違っても、そんな言葉は言わねぇよ。
睨み付ける俺に、優司はニヤリと満足そうに笑う。
ったく、調子こきやがって。
早く、イヤミの一つ二つを言えっての!
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