⑨私、どうしたらいい

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雫は俺のタイプの女じゃない。 だから、恋愛感情はない。 ただの記憶力の悪い、赤ん坊みたいな、世話のやける女。 「好人っ、好人っ、早く帰って来てね♪」 でも、何だか当たり前のように玄関で手を振り見送る雫に、 「おう、行ってくるわ」 そうやって俺も当たり前に言ってしまうのは、一体何なんだろう。 放っておけなくて。 守ってやりたくて。 俺は今まで、好きな人以外に、こんなに他人の事で親身になった事はない。 当たり前の話しだけど。 他人は自分と同じで、選択肢の答えはいつも自分の中にあると思っている。 それを、全部俺が決めるだなんて後々面倒くさいから、口を挟む事もせずに放置してきた。 だから、他人に冷たいとよく言われる。 元々、誰かに何かしてやろうだとかも思わない俺は、自分の話をするのも苦手だ。 自分の気持ちだとか、心意みたいなもんなんて、別に他人なんかに知ってもらわなくてもいい。 俺は俺。 他人は他人だから。 そう思いながら何十年も生きてきてるからか、言葉にもトゲがあるだのキツイだの言われたりする。 だから、何だつーの。 そういうふうに、俺は他人様から思われているらしい。 どうでもいい事なんだけど。 『月読 雫』か……。 親戚の奴らには、頭にきてたのは確か。 優司の嘘にも、すっきりはしたが。 あの女が、俺の彼女。 はたまた、婚約者。 ……無理だろ。
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