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「ご指名って、どこのお宅なのかしら」
「堀河さん」
「あの、この辺りで有名な資産家の堀河家?」
堀河さんの本宅じゃなくて、俺が行くのは少し離れた別宅だ。
あそこもボケた、ばあさんが独りで家の中に居る。
時々何か言われたりするが、聞き取れなくて愛想笑いで、俺は無視して草むしりをする。
「大変じゃない、独りで」
「対した事ないよなぁ、永居ぃ?」
俺は腕組みして、睨み付けて吐き捨ててやった。
「業務命令なんでねぇ、例え二世の平社員の言う事でも、逆らえないのが下のもんの痛いとこですわぁ」
今の会社はてめぇが大きくした訳じゃねぇのを肝に入れとけや。
バカ息子!
「誰か草むしり大好きな人いないかしら。そう言う軽作業専属でバイトを雇えたらいいのにね」
リサは明るい声で、俺の不機嫌をかき消すように提案をする。
「リサはいい案を出すよね。さすが俺のパートナーだよ」
キモチ悪りぃ。
パートナーだってよ、コイツ。
わざわざ俺にイヤミで返してきやがって。
「軽作業でガッポリ給料貰えんなら、俺はいつでも喜んで業務命令に従うまでですよぉ」
おっ、息子の表情が固まった。
バーカ。
涼しい事務所で何する訳でもなく社長の捕手で適当に時間潰してる、てめぇが従業員にデカイ態度取るから、逆にバカにされるんだよ。
「じゃ、軽作業の草むしり行ってきますわぁ」
俺は透かして、わざと分かるように冷たい視線を刺して、その場を去った。
役立たずで、無能なんだよ。
知ったかぶりで、いきなり造園業務に携わる意味が知れんな。
あんなだから、嫌われるんだよ。
自分を思い知れ。
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