⑩私、草むしりでいい

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雫は日中に昼寝しているからか、長々夜も寝付いてくれずに、俺はそういう事でも少々困っていた。 ベッドに横たわり、雫はゴソゴソと寝返りを繰り返す。 「もう、俺は寝るぞ?」 電気を切ろうとすると、 「あっ、お便所」 とか言ってはウロウロして戻ってくる。 「雫、こっち来い。早く寝るぞ」 「うん♪」 俺の隣に寝っころがっては、また反則な笑顔で俺を覗き込むように見る。 「俺は今日は仕事で疲れてる。雫の記憶みたいに明日は明日で頭の中も身体もリセットしなきゃならない。だから、今日はもう寝るんだ。分かったか?」 32歳の女に、こんな説明の仕方をしてるのも、何だかなぁ。 「好人、怒ってる?」 「怒ってねぇけど。寝ないと、くすぐるぞ」 「やだぁ!…えへへ☆」 かまってやるために言ってんじゃなくて、冗談抜きでマジに寝ろって。 雫は嬉しそうに笑ってくる。 その表情に変な気持ちが、よぎってしまった。 電気を消して、そっと雫を横目でチラ見した。 すると、ギンギンに目を開けている。 「目を閉じなきゃ、寝付けねぇだろ?」 雫は静かに大きな瞳を閉じた。 ヤバイ……。 そう思った時には、俺は身を乗り出していた。 可愛いな……。 どさくさ紛れに、まだ閉じられたままの雫の小さな口唇に、軽く自分の口唇を乗せた。 柔らかい……。 雫、おまえズルいなぁ。 本当は起きてるはずなのに、こんな時は寝たフリか。 恥ずかしいじゃねぇかよ。 俺だけが、こんな気持ちで。 勝手にキスした俺の気持ち、どうしてくれるんだ。 悶々として、結局俺が眠れなくなってしまったじゃないか。
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