⑩私、草むしりでいい

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翌朝になって、慌てて急いで、車で仕事場へと行く。 次の朝も、そのまた次の朝も。 何かもうあの夜から、雫が寝たのを確認してから寝るもんだから、俺の方が寝付き悪くなって寝不足続きだ。 カッコ悪りぃな、俺。 昼休憩中に優司が俺に話してきた。 「しかし久我山リサって女は凄いねぇ。求人雑誌にうちの造園、アルバイト募集を載せたんだってさ」 「へぇ、そうなんだ」 「あの女が提案したらしい。社長も息子も会社も、あの女の思うがままだな」 「それ、知ってる」 俺たちは定食屋で、よく会社の愚痴を溢す。というよりは、優司がほとんど愚痴ってるな。 「何で?」 「俺が草むしりの仕事ばかり任せられるから」 「そうなのか?」 「簡単な軽作業専属でアルバイトを雇うみたいな話。俺もいい案だと思うけど」 「ふぅ~ん」 優司は何か不満そうに返事をした。 リサの提案ってのが、気にくわないんだな。 「俺も草むしり嫌ではないんだが、腰がどうにも最近調子が悪くてな」 「ヤリ過ぎなんだろ?」 「味噌汁ぶっかけるぞ?」 とか言いながら、俺はあの夜から実は雫が目を閉じた後に、コッソリとキスをして寝ている。 誰にも言えない、俺の絶対的な秘密。 はっきり言って、俺だって男だ。悶々とした気持ちを解放しないと眠れない。 ましてや、隣に毎晩女がいて何もしないでいるんだから、その理性を保つのは相当なものだ。 「えぇ~!何かぁ、アヤスゥーイ!」 「何もねぇよ。言ったろ?雫は恋愛対象外だって」 優司は無言で俺の顔を見てニヤつく。 「しつけぇな…」 キスくらいで、俺の本能を解放したって、いいじゃねぇか。 「いや、そのヤツレタ表情を見たら疑ってしまった。すまん」 ヤツレタ表情は当たってるな。 「雫さ、日中に暇で昼寝ばっかしてるから夜が寝付けねぇんだよ。何か雫でも日中に出来る事ないかなぁと思って」 「家事はちょっと危ないしな。外に出たら帰って来れないし…」 「草むしりの話したら、冗談で楽しそうとは抜かしてたけど」 俺はボソッと言った。
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