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「それだ!」
優司は指を鳴らして、俺に言った。
「雫ちゃんなら、草むしりみたいな一つの作業を集中してやるのは適してるよ。アレやコレやは忘れちゃうからな」
「まぁ、そうだな」
「いいじゃん、いいじゃん♪」
「しかしな…」
雫は、年齢の割には幼いし。
少し変わってるからな。
「偏見は捨てろ。雫ちゃんはいつでも俺たちと同じ。おまえがそうやって見たら、周りもそうやって見るぞ。とにかく、やらせてみたらどうだ?」
「雫には話してみるよ」
でも、何だか事務員には頼みずらい。
リサにも、あのバカ息子にも、俺は態度が悪いし、嫌われてるから、話しかけずらい。
「俺から頼んでやろうか?好人はシタテに出るのはヘタクソだから」
「うるせぇ、雫の事くらい俺が何とかするし」
優司には、助けてもらいっぱなしだから。
有難いけど、やっぱり雫は俺の雫だから。
俺が連れて帰って来て、俺が世話してるから。
自分で動かないと。
「なぁ、好人。おまえは引っ張られるよりも、引っ張ってく方が向いてると思うよ。理想は所詮理想でいつまでも続かない。現実はやっぱり自分の本質を引き出していく相手を自然と選ぶから、永く一緒に居られるんだと思うよ」
「何だ、そのウンチク。くだらんな」
俺は何だか照れ臭くて、優司に冷たい言葉を吐き捨てる。
「雫ちゃんを守ってあげる好人を、俺はいつでも助けるよ。だから、何でも遠慮なく言えよ」
そう言われて、俺は少しだけ胸が熱くなった。
優司の言葉には、重みがあって。
俺のネガティブ思考に、ちょっとだけプラスを加えてくれた。
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