⑪私、かまって欲しい

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「おはよう、仲良しお二人さん」 ヒールの音を鳴らして、声を掛けてきたのは、そのリサだった。 「おはよう」 「さっそくだけど、永居くん。雫ちゃんはどうだったのかしら?先に雑誌の求人募集はもう締め切ったから」 リサはすぐさまアルバイト募集の話を切り出した。 「そうだ、好人。雫ちゃんは何て?」 優司も気になった様子で俺に聞く。 「草むしりやりたいって」 「おぉっ?!そうかそうかぁ」 「じゃあ、もう早いとこ面接して採用してもらわなきゃね」 二人は喜んで、顔を見合せていた。 コイツら、実は似た者同士か? 「面接の日にち決まったら教えるわ」 「面接しなきゃダメか、やっぱり…」 「そりゃあ、会社は会社だからな」 雫はちょっと、難しい事言われたら、うまく答えられないだろうし。 色々聞かれても、答えずらい話もあるからな。 「雫ちゃんはすごーく純粋な子だから、面接はなるべく簡単に済ませられたらと思う」 優司が、悩む俺の横でサラッとリサに伝えた。 「大丈夫よ。面接は私も付き添うから。後は私に任せて」 「すまんな、二人とも」 俺は何もかも二人に任せてる。 「どうしたのよ、いいのよ。そんな謝らなくても」 「そうだよ。気にするな」 雫の身内の事では、優司に任せてしまって。 雫のアルバイトの事では、リサに任せてしまって。 俺は何もしてない。 「好人は雫ちゃんを、大切に思ってればいいんだよ」 「好人は雫ちゃんの、そばに居てあげるだけでいいのよ」 二人は声を揃えて同時に俺に言った。 「何言ってるのか、聞きとれないから、もういいや」 だいたい同じ内容だ。 二人の俺と雫を助けたいという思いは、ちゃんと伝わったから。
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