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昼からの剪定作業を終えて、会社に戻って事務所に会社の車の鍵を返すのに、近くに居たリサが言った。
「面接の日、決まったわ」
「えっ、もう?」
「来週の木曜日の10時から、大丈夫?」
「分かった」
「履歴書持参ね」
「おう」
まさか、雫の事でこんなにリサと1日何回も会話できるなんて。
「私が付き添うし、とにかく余計な質問はさせないから。絶対採用させるから」
「分かってるよ。リサは何でもこなせる事は、俺が一番知ってるから」
知ったかぶり。
でもそれは、
俺のため?
雫のため?
いや、どっちだっていい。
リサに優しくされて、俺は過去の彼氏として自信過剰気味。
「おだてても、私から好人に特別なものは何も出ないわよ」
特別なものか。
「…ないの?」
リサは、俺の視線を冷たく逸らして言った。
「早く帰って、雫ちゃんに報告してあげなさい」
学校の先生みたいな事を言われて、何も手応えがない事を、虚しく思い知る。
「はいはい、お疲れ様でした」
俺は雫の待つ家へと、さっさ帰る事にした。
リサと話すと、未練は多少なりとも、女々しくある。
雫には、恋愛的感情はまだないけれど。
何か、自分の欲求を押し付けたい、早く自分のモノだけにしたい。
今はそればっかりだ。
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