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家に帰り、雫は本当に玉子焼きを作ってくれた。
それしか出来ないからなのか、かなり上手に巻いていた。
おかずなんて、これで充分だ。
甘味のある玉子焼きは、意外と俺好みの味で、驚いた。
「うまい、気に入った。また、玉子焼き作ってくれよな」
「えへへ☆」
全然普通じゃねぇか。
普通より、ややボケ気味の、小学生みたいな女じゃねぇか。
「今日、会社で雫の草むしりの話をしたんだ。そしたら来週の木曜日に面接な。おまえが覚えてなくても、俺が覚えておくから心配するな」
「うん」
「履歴書持参だから、また来週になったら書き方教えてやるからな」
「うん」
あんまり、分かってないような気もするが、このまま毎日家の中に居るよりは、時々外に出ていた方がストレスも堪らないからな。
もう、雫と知り合って一緒に住むようになり1ヶ月はたった。
割りと早い展開で、毎日過ごして居る。
こうなる事は、今までの俺の中では有り得ない事で。
まさか、こんな女を家に入れて、他人の事に世話までやいて、情を感じて一緒に住む事になるとは。
どうでもいいって、流して無視してきた感情が、雫に対しては流せないだなんて。
俺も年か…。
「好人っ♪」
「何だ、おまえ。飯つぶ付いてる」
こうやって、この女の口元に付いた飯つぶまで親切に取ってやる俺は。
「ありゃ」
「ありゃじゃねぇよ」
そうやってやってる事の感情を恋愛感情と呼ぶならば、それはそれで認めるべきなのか、俺は?
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