⑬私、面接する

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俺はいつまで我慢したらいいんだ。 「どっかに、ハサミとのりがあったな…」 俺は雫から離れた。 雫は、俺のタイプじゃない。 だけど、いつもこうやって、こんな近くに居て、俺は雫を求めてる。 好きなのか、俺も。 好きだから、こんな気持ちになるのか。 履歴書を見つめる雫を、俺はどうしようもないくらい愛しく感じた。 「明日は朝早いから、それ貼ったらおまえは風呂行け。あとは俺が書くから」 「うん」 そう言って、雫は写真を貼り風呂に入りに行った。 雫の学歴、職歴なんて知らないもんな。 とりあえず卒業アルバムの小、中学校までは書いておくか。 まぁ、空欄ばっかりだけど仕方ない。 あとは、リサにうまく取り計らってもらうしかないな。 俺は一息ついて、横になった。 今まで、雫はおばあさんに守られて生きてきた。 でも、雫の両親って一体どんな人たちなんだろう。 両親は何故、雫を独りにしたんだろう。 その部分が本当の意味で、雫の闇なんだろうな。 親と一生の離別か。 考えた事ないが、いずれは俺にもそんな日がくる。 その時に、ようやく俺にも分かるのか…雫の闇が。 そして寂しくないように、隣に居てくれるのが、俺の場合は雫なのかな。 本当に俺は雫と一生を共にするのか。 今はまだ、やっぱり先の事は分からねぇ。 風呂から出てくる雫。 オレンジジュースを冷蔵庫から取り出して、コップに注ぐ。 追いかけるように俺の視線は、雫の髪の先が濡れていて、飲み干す喉や口元を見ていた。 胸がグッと縮まる感覚がした。 身体の一部がまた熱くなる。 「雫、ちょっと」 「何、好人っ☆」 警戒心のない幼い顔をして、近寄る雫の腕を掴んだかと思えば、俺の胸に雫を埋めるように抱き締めた。 「いつまで俺は我慢したらいいんだ」 「えっ?」
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