⑬私、面接する

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俺がしてやったように、深いキスをしてくる。 こいつ、俺よりうまくないか? 知っていて隠していたのか? それとも、俺への感情でこんなにうまくキスができるのか? いつもと違う雫に、俺は驚き、隙をみせてしまう。 「……んぅぅ……んっ、んっ……」 恥ずかしい事に、声が出てしまった。 どうやら俺の身体は、雫からこんなキスをされて、充分満たされてしまったみたいだ。 脳みそが溶かされて、身体の力が抜ける。 キモチいい……吸われてる感が……眠くなる……生暖かな……雫の舌の感触が……。 そして俺は目を閉じて、しばらくすると本当に眠ってしまった。 朝、目が覚めた時に。 フガッ! 昨晩の出来事を思い返して、頭をかかえた。 …しまった。 俺は雫のディープキスで、アイツと同じように眠りこくってしまったんだ。 …しまった、何て勿体ない。 あんだけ説明して、何やってんだ。 結局、やらずじまいか。 床で、ごろ寝してしまった隣には、雫も仔猫みたく丸まって寝ていた。 「雫、起きろ。朝だよ」 「……ふぉ?……あしゃにゃ……」 寝ぼけながら起きる雫。 相変わらず、何言ってんのか分からねぇな。 「面接あるから、今朝は少し急ぐぞ」 「……面接?」 「そうそう」 忘れてもどっちでもいいから、さっさと支度しろ。 何だろう、以前よりも自然な態度で俺は雫に接していってる。 鍵締める時から、俺は雫の手を離さない。 車の中でも、繋がれたままの手。 「緊張してる?」 「あっ、好人。あそこスズメがたくさん!」 緊張はしてないようだな。 メデタイやつだ。 会社に着くと、リサと優司が事務所で俺たちを待っていた。 「おはよう、仲良く手を繋いでくるとは、コノコノーッ☆」 俺は、とっさに手を離した。 「おはよう雫ちゃん。はじめまして、優司です」 「おはよう、優司さん」 優司は雫が名前を覚えられないのを前提で、そう挨拶をする。
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