⑬私、面接する

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リサに雫と手を繋いでいる姿を見られてしまって、何だか俺だけが勝手に気まずい。 「あら、彼女が雫ちゃん?」 リサは優しい表情で言う。 「そうだ、彼女が好人のエンジェルハートちゃんだ☆」 優司が、俺よりも先に雫を自慢気に紹介する。 ……何が、エンジェルハートだ。 「おはよう。はじめまして、久我山 リサです。前田くんの言う通り、名刺にひらがな書いてきたわ。……はい、これ。あげるね」 雫は恥ずかしいのか、それを受け取ると、やっぱりまた俺の後ろに隠れて、コソッとリサを見る。 まぁ、いいや。 「これ、雫の履歴書なんだが。ちょっとまだ俺にも不明な箇所があって、空欄が多いけど、大丈夫かな?」 「可愛い子ねぇ。そりゃあ、永居くんが抱き締めたくなるのも無理ないわ」 ……ざけんな、そんな話どうでもいいわ。 「雫ちゃん、このお姉さんが今日の面接で付き添ってくれるから、何も心配しなくていいからね」 優司も柔らかい言い方で、そう雫に伝える。 「好人は?」 雫は俺を不安気に見る。 「俺は仕事だから、一緒にはいられない」 「そっか…」 「みんな忙しいのに、おまえのために時間をさくんだ。だから、ちゃんと初対面で、分からなくても、頭下げて言わなきゃいけない事があるだろ?」 モジモジしてる雫を前に出させて、 「本日はお願いします」 実は、さっきちょっとだけ車の中で練習した。 「永居くん、あなた相変わらずキツイわ。言い方が」 「そうだそうだ。もっと女の子には優しくしろ」 何なんだよ、コイツらは! 優司、リサが嫌いじゃなかったのかよ! やたら、団結してるよ。 「じゃあ、頼むわ」 「履歴書については、何も問題ないわ。心配しないで。ほぼ、受け入れ体制はバッチリだから」 リサは強気で言った。
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