評判のない新聞屋

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 有栖命……アリスは、ため息にならない程度に息を吐いた。場所は一階と二階の間。踊り場。掲示板の前。 「つまんないなぁ……」  次は完璧にため息。さようなら、アタシの幸せ。そんなことを考えながら、ため息と一緒に飛ばしていた視線を引っ張り戻す。 『学園新聞』  A三の用紙の右端に大きく印字された文字を見てため息追加。なんだったら今日一日、ため息だけで過ごしてやろうか。暑さにやられた頭が馬鹿なことを考える。 「つまんないなぁ……」  別に、その感想は人生とか学校生活とか、いかにも十七歳といったことに向けて……ではなくて、単純に、ついさっき自分が張り付けた学園新聞を見た感想なのだった。 「読んでる人いないし」  そりゃそうだ。自分で相槌を打って鼻で笑う。この新聞の編集長のアリスが、多分きっと、一番つまんねぇとか思っているのだから。
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