評判のない新聞屋

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 学校新聞というのは、まぁ、イベントのお知らせとか、部活の紹介とか、行事の記事とか、そういう当たり前のことがメインで掲載されてるもので、ドキドキするようなスキャンダルとか、ワクワクするようなゴシップとは縁がない。  仮に、『発覚!教師と生徒の禁断の恋!』とか『スクープッ!! 真柴先生やはりヅラ!!』とかやったとしたら、そりゃみんな面白がって読むだろうけれど、発行した日の昼休みまでには、生徒指導室か校長室送りになるだろう。  かといって、生徒個人に絞っていっても、まぁ、運動部インタビューとかはそれなりに需要はあるのだけれど、噂レベルのゴシップなら、学校裏サイト的な所を見た方がよっぽど詳しいと思う。あるかどうかは知らないけれど。 「というわけで、みぃちゃん。つまんないワケさ」 「なるほどーはいはいそうですねー」  うおぅ。流れるような棒読みだもの。アリスはこちらを見もしない可愛い後輩に非難の視線をむける。 「ちょっと、和泉さん。和泉倫子さん。先輩が悩んでるのに、その態度はどうなのかしら?」 「まぁ、失礼しました。ところで先輩。私も部活の先輩がすぐにサボってお喋りするので、どうしたらいいか悩んでるんです」  そう言って、可愛い後輩はニッコリ笑う。おお、全然目が笑ってないもの。怖いもの。  アリスは苦笑いでごまかして、手元の手帳に視線を泳がせる。  和泉倫子。いずみみちこ。みぃちゃん。新聞部の後輩。クールで、辛辣で、ボブカットのよく似合う、可愛い可愛い後輩。 「まぁ……確かに、もうちょっと、どうにかしたいですけれどね」 「うん?」  倫子が手招きをしたので、アリスは上半身を隣のデスクに寄せる。倫子が指さしているのはパソコンのディスプレイ。表示されているのは、新聞部のウェブサイト。 「サイトがどうかした?」  サイトはようするに、新聞の記事をジャンルごとに掲載しているだけなのだけれど。 「……本日の閲覧。おお、めずらし。二十も回ってる」  いつもはどんなに多くても三くらい。 「これ、全部私です。更新してたので」 「おおぅ」  ぬかよろこび過ぎる。 「ちなみに、今月累計二十です」  本日、七月二十日。終業式でした。 「さすがに、へこみますよね」 「……帰りにアイス食べに行こう」  これは本当に、どうにかしないとなぁ。思わず、本日最大級のため息がこぼれ出た。
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